寿司を塩で食うな

非キラキラ大学生2人の楽しい日記

孤独なグルメ

14時を過ぎ、初めての中国語の授業が早めに終わった。いつもつるんでる新友は2人ともドイツ語選択、第1講義棟を出た私の周りには誰もいない。昼休みは留学やなんやかんやの説明会で潰れてしまったのでまだお昼ご飯に手をつけていない。また、か…と1人心の中で呟いて、不本意な両脚をおずおずと動かす。道の突き当たりにある生協に辿り着く。俺は今、何腹なんだ…? 自問自答しながらも歩みを進める。カレーは食べた。アメフト部との共同メニューのカツ丼も食べた。竜田チキン丼も食べた。丼系しか食べてない。しかし胃は、満腹中枢は、小麦粉を拒否する。今日は肉もお気に召さないらしい。魚か。魚なら… これだ。鯖の塩焼き定食。お腹が鳴る。正解のようだ。
本能に従うままに鯖の塩焼きをホットコーナーから奪い取り、米と味噌汁を注文する。野菜が不足しているが… まあいい。空いた食事スペースには物足りない1つの身体をひっそりとパイプ椅子に収め、ひと呼吸。いただきます。プレイボールが宣言された。

鯖の塩焼き。走攻守に隙のない理想的主菜。朝練もデイゲームもナイターゲームもきっちりこなすことのできる、しかし決して目立つことのない、味のある選手だ。サバは足も速いし、性格も骨がある。これはうまいことを言っているつもりなので感心してほしい。などと考えながらそのベテランに箸を持った手を伸ばす。ひと口。やはり骨がある。私は突然神妙な面持ちになる。

焼き魚につきものの骨。うまく切られていて骨をまとめて取れるようになっているのならキレイに食べられるのだが、そうでないときにどうすればいいのか、いまだに答えが出ていない。選択肢の1つ目は骨を箸でとってから食べる方法。これが最もベーシックなのかもしれないが、実際やってみると箸使いがなっていない為に細い皿の上が散らばった魚の繊維で見栄えが悪くなってしまう。こんな真似は誰も自分のことを見ていない状況とはいえここではできない。同様の理由で骨ごと口に入れて骨だけ出すという方法も不適切。となると最終手段である。骨を飲む。といってもそのまま飲み込むのはリスクが高い。骨を噛み砕く? 奥歯は細いものを処理するのに不向き。ならば前歯でちまちまと刻んでいくしかあるまい。これが僕の解答だ。

自問自答の果てで満足した僕は黙々と魚を味わい、骨を細かくしていくのであった。

 

 

 

独りぼっちのお昼ご飯を無駄に引き延ばしたらこうなります。(ここまででちょうど1000文字)